設立趣意

 

第2次世界大戦直前に起きたヒンデンブルグ号の大惨事が起きるまでは、飛行船は大西洋横断の定期航路に就航するなど航空旅客輸送の主役であった.世界一周飛行で日本にもやってきた。大惨事の後,浮力材の水素ガスをヘリウムガスに変えるなどの対策が取られたが、航空旅客輸送からの退場を余儀なくされた.第2次大戦後,観光用などとして辛うじて命脈を保ってきた。

ところが地球温暖化の進展とともに、飛行船が大きく見直されるようになって来た。飛行機やヘリコプターが自重を動力で支えるのと違って、飛行船は浮力で自重を支える。そのため、エネルギーを消費することなく、空中に浮かぶことができる。これは脱炭素の上で圧倒的に有利である。

欧米においては飛行船の開発が急速に進展し始めている。我が国の現状は完全に出遅れており、大変憂慮すべき状態にある。

飛行船は材木の切り出し、近距離のリモセンを可能にするので、過疎地域の活性化や国土保全にも大きな力を発揮すると考えられる.また、陸上交通の混雑解消を通して物流に大変革を起こそう。災害時の物資輸送などの救援活動に大きな貢献が期待できる。

陸上交通のインフラ建設が十分でない開発途上国の物流を大きく推進し、途上国の発展に大きく寄与するであろう。

本学会の主目的は、飛行船設計技術の確立であるが、飛行船の歴史および社会経済的側面についても議論の場を提供する。その理由は、時代の最先端を走っていた飛行船がヒンデンブルグ号の大惨事により、ほとんど死に体となってしまった飛行船技術が復活しつつあるのは、「脱炭素」という時代の最重要課題に大きく貢献できる可能性が認識され始めたからである。

飛行船は浮力で自重を支えるので、飛行船の技術は船舶工学に極めて近い。潜水艦は水中で活躍するものであるが、水が空気に置き換わったものが飛行船である。幸なことに、我が国には世界に誇る造船技術がある。日本人にとって飛行船の開発は決して難しくないといえよう。製造設備や試験設備もある。

現在は「成⾧第一」で突っ走ってきた資本主義経済に、「地球環境重視」の経済へ転換することが強く求められている。飛行船技術は、この時代の要請に応える技術のあり方を教えてくれる。飛行船の技術開発を通して、「技術と人類社会のあり方」に関する活発な議論の機会が得られるに違いない。

したがって、本学会を通して、技術者ばかりでなく社会経済の関係者も含めて、活発な議論が生まれることを期待する。新たに学会を設立するまでもなく、既存の学会の一分野とすることも考えられるが、何ものにも囚われない自由な活動をするために、敢えてゼロからのスタートをすることにした。

いずれにしても、出遅れてしまった我が国の飛行船技術が諸外国に追いつくために、広く有意の人材を結集すべく日本飛行船学会を創設する必要がある。

学会の創設を力強く提唱する次第である。

 

 

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